2011.04.30
『事実』と『真実』を混合するな(遊報2011年4月号掲載)
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『事実』と『真実』を混合するな
フェイス総研
取締役社長 松本 和義
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「松本さん。現場からこんな要望があがってきたのですが…」
フェイス商事(仮名)の人事部、鈴木課長(仮名)はそう言うと、私に分厚いファイルを手渡しました。それはアンケートによる全社員の意識調査をまとめたものでした。
「それにしてもすごい量ですね。まとめるだけでも大変だったんじゃないですか?」
「確かに大変でしたけど、もっと従業員にイキイキと働いてもらいたいですからね。これも人事部のミッションです」
誇らしげに話す鈴木課長からファイルに目を移すと、具体的にあがった声は六つにまとめられていました。
一、これだけ結果を出しているのだからもっと給与を出してもらいたい。
二、公正な評価制度を作ってもらいたい。
三、社長はもっと現場に権限委譲をしてほしい。
四、社員全員で年に一回くらいは旅行に行きたい。
五、今の時給だと良質なキャストを採用できない。
六、店舗のビジョンや方針が見えない。明確にしてほしい。
鈴木課長は、これらの要望のどこから手をつけたらいいのか悩んでいました。
「えっ?まさか鈴木課長はこれを一つずつ処理していくつもりですか?」
「全部は無理かもしれません。でもせっかく意見を出してもらったので、どうにかしてあげたいんです」
どうにかしてあげたいという鈴木課長の気持ちはよく分かります。ただこれらのコメントは『事実』であって、『本質』『真実』ではないことが多々あります。そこで私は『事実』と『真実』について自分の経験を話しました。
「公正な評価制度」を望む声はほとんどの会社であがること。しかしよくよく彼らの話を聞いてみると、評価項目云々ではなく、「なぜ自分が同僚のAさんより評価が低いのか、十分に説明をされない」ことへの不満であること。「社員全員での旅行」で本当に求めているのは、みんなで語り合う場、仕事以外の場でコミュニケーションを取る機会であること。「店舗ビジョンを明確にするべき」も同様に、店舗ビジョンや方針はあるけれど、店長自らメンバーに直接伝える機会がないために曲解されたり、伝え方が下手なために伝わらなかったりすること。
「だからこういっては何ですが、従業員の声をそのまま鵜呑みにすると間違った方向に行ってしまうんです。彼らの求めている真意は何なのか。本質は何なのか。真実は何なのか。そういう観点が抜けてしまうと対策が検討外れなものになりかねません」
「…いや、自分は怖いことをしようとしていたんですね。従業員の声にそのまま振り回されていました。『事実』と『真実』『本質』、もう一度慎重に考え直します」
私は鈴木課長から素晴らしい提案が上がってくる。そう思いました。
遊報 2011年4月号掲載
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